抄録
私たちの社会は認知的分業の上で成り立っており,このことは子どもの知識獲得場面においても留意すべき点となる。知識の多くは他者を通じてもたらされるが,他者が全て同じように信頼できるわけではない。医者は病気の情報源としては信頼できようが,ガーデニングについては素人である(ことが多い)。したがって,花の育て方に関する医者の助言は庭師の助言よりは信頼できないとみてよい。本研究では病気に関する情報源として幼児が誰に信頼をおくかを検討した。4つの実験の結果,3~4歳児は病気のタイプにかかわらず母親に高い信頼を置いていること,7・10歳になると医者に対する信頼が高くなること,大人は病気のタイプによって情報源を使いわけることが示された(アレルギー疾患は母親,伝染性や重度の疾患は医者等)。以上の結果は,病気に関する理解が精緻化されていくにつれ,それに制約される形で情報源の評価がなされていることを示すものである