なつかしさは過去への憧憬であり,ポジティブな気分とネガティブな気分が混在した複雑な感情である。近年,このようななつかしさ感情はさまざまな心理過程に影響していることが示されている。本研究では,広告にしばしば用いられる音楽によって喚起されたなつかしさ感情が,商品の魅力や記憶に与える影響を検討した。実験では,なつかしさを喚起あるいは喚起しない音楽が90秒間提示された。その間に,注視点に続いて商品動画5秒間,商品と広告文が5秒間提示された。全部で6つの商品が提示された。その後,魅力度など商品に関する属性,広告に関する記憶課題などを行った。その結果,なつかしい音楽を聞いていた場合はなつかしくない音楽を聞いていた場合にくらべて,商品に対する魅力度が高く評定されたが広告レイアウトの再認成績は低かった。これらの結果は,なつかしさ感情が商品に対する評価に影響を与えることを示唆しており,その過程の検討を行った。