抄録
人間の記憶においてfalse memoryが知られているように、認知プロセスには誤りが生じうる。本研究では、実世界の環境情報に関して、記憶に基づく誤った新値が形成されていることを行動実験によって示した。特に、この誤った信念は環境構造と整合的であり、系統的に形成されていることを明らかにした。そしてこの系統性は、実世界の環境情報を推論する際に、正確な推論を促進することが計算機シミュレーションによって明らかになった。以上のことから、記憶に基づく誤った信念は実世界の環境情報を理解する上で、適応的に機能していることが明らかになった。