抄録
本研究では,日誌法により大学生のライフイベントを対人領域,達成領域に分けて記載させ,それぞれの想起過程に関わる事象の相違を検討することを目的とした。また,各イベント想起時の記憶の鮮明さや感情喚起度などと,個人の抑うつ度との関係についても検証した。日誌に記載したライフイベントの再生率は対人・達成領域間に違いはなく,また抑うつ度による再生率の相違も認められなかった。一方で抑うつ傾向の高い実験参加者は,再生テスト時におけるイベント想起の鮮明度および感情喚起度が低いことが示された。この結果はWilliams(1996)の抑うつ傾向と記憶の概括性の論点から考察された。