抄録
漁田・深沢・漁田(2015)は,2種類の学習時間で,匂い文脈依存再認を調べた。その結果,符号化特殊性原理で説明可能な結果パターンを示した。ただし場所文脈(Isarida, Isarida, & Sakai, 2012)とは異なり,長い学習時間でも有意な文脈依存再認が生じた。これは,アウトシャイン原理の影響を受けた場所文脈よりも,匂い文脈が強い手がかり効果を有することを示すようにも見える。そこで本研究は,項目手がかり強度を高め他条件での匂い文脈依存再認を再検討した。このため漁田ら(2015)のリスト長40よりも短いリスト長30を用いた。その結果,リスト長30では匂い文脈依存再認が生じなかった。さらに,匂い,場所,BGMというグローバル環境的脈における文脈依存再認の効果サイズが,DC条件のHit率(項目手がかり強度の推定値)とともに低下することを,回帰分析で見いだした。