抄録
複数刺激の動的な視覚短期記憶プロセスを調べるために,高速逐次視覚呈示(RSVP)刺激の呈示時間を短く正確に制御し,呈示速度が刺激とその順序の記憶に及ぼす影響を調べた.刺激は0~9の数字からランダムに選ばれた1~4つの数字であり,10~400ミリ秒で RSVP呈示した.若齢者(N=13, 平均年齢21.4) を対象に刺激系列の再生記憶課題を行った結果,刺激と順序が正しく記憶できる呈示時間よりも短い呈示時間で,各刺激の記憶精度は高く,順序だけが不正確な順序錯誤効果が見られた.また,記憶精度の段階によって,入れ替わりやすい順序に一定の傾向が見られた.同一被験者を対象に,記憶課題と同様の刺激を用いて知覚順序判断課題を行った結果,知覚順序判断が正確な呈示時間でも記憶順序の錯誤が起こることが分かった.本研究の記憶順序錯誤効果と,注意の瞬きや巡回系列順序錯誤等の先行研究を比較し検討した.