抄録
記憶の検索において、検索対象と検索されるアイテムが強く関連しているほど検索確率や検索速度の成績が良くなることは多くの研究から知られている。中でも流暢性課題では、検索初期に比べ検索中期以降では検索にかかる時間が増加することや、ワーキングメモリ(WM)能力が高い個人は低い個人に比べて回答数が多くなることなどが知られている。本研究は、参加者は検索初期に無意図的な検索を行うことに着目し、検索初期の回答量とワーキングメモリ(WM)課題・時間ごとの検索数・既存の知識量との関係性を調べた。検索初期にすらすらと検索された回答の量はWM成績(r=0.24)・開始より3分までの回答数(r=0.41)・6分経過より9分経過までの回答数(r=0.32)とそれぞれ正の相関を示した。意外な結果として、既存の知識量はr=-0.27の負の相関を示し、検索可能な情報が多い人ほど初期の検索数が少ないことが示された。結果の一般性に関して、異なる参加者集団を対象として検討する必要がある。