抄録
実際と異なる心拍などをフィードバックするfalse physiological feedback (FPFB) によって,画像の魅力度や表情刺激の強度が修飾されることが報告されている。しかし, FPFBが感情体験における感情価,覚醒度のいずれかのみに影響するのか,両者に影響するのかについては明らかになっていない。そこで,本研究では22名の大学生を対象に,実際の心拍と同じ,速い,あるいは遅いフィードバックを純音により行いながら,表情刺激提示時の自身の感情価と覚醒度について,それらを一度に評定可能なAffect Grid(Russell et al., 1989)を用いて回答させた。その結果,実際と同じ心拍の時と比較して,異なる心拍フィードバック時に覚醒度の低下が認められた。一方で,感情価については有意な差異は認められなかった。以上の結果は,FPFBが覚醒度にのみ影響することを示唆している。