抄録
ライフストーリーの語りにおいて聞き手の存在が及ぼす影響について検討した。語り手は「子ども時代」「仕事」の二つのテーマで、2人の聞き手に個別にライフストーリーを語った。さらに各テーマについて、聞き手がいない状況で一人で語った。面接、一人語りともに時間は1時間であった。語りは全て文字化され分析された。主な結果は以下の通りである。(1)一人語りに比べて面接の方が、発話量が多かった。(2)面接では一人語りに比べて、言葉や時代背景に関する解説、前に述べたことに言及する表現、現在と対比させたりつなげたりする説明が多かった。(3)面接では、聞き手の知識を確認する質問、聞き手の対場に配慮したり聞き手を楽しませたりする発話や話題選択が見られた。また想起したにもかかわらずそのことに言及しないケースも多く認められた。(4)聞き手からの反応が多い場合には、語り手もそれに同意したり抵抗する等の反応を示した。