抄録
ある学習内容について,事前にその内容を検索しようとすると,たとえ検索に失敗しても後の学習が促進されることが知られており,failed retrievalと呼ばれる。Failed retrievalの生起メカニズムについては明らかにされてないが,事前に検索することで関連した情報が活性化されるためであるとされている。また単語対を用いた場合,検索した直後に正答フィードバックを行わなければ学習促進が生じず,これは活性化される情報が少ないためだといわれている。本研究では学習前に検索する情報の量と正答フィードバックまでの遅延時間を操作し,学習促進に及ぼす影響を検討した。その結果,情報量を増やしても,従来の手続きに比べて学習は促進されず,また正答フィードバックとの交互作用もなかった。このことから,failed retrievalは検索時に意味的な活性化が生じることが原因ではない可能性が示唆された。