抄録
鉄道旅客は列車の乗り心地や温熱環境等、様々な要因に基づいて快適性を感じている。これらの個別要因ごとの快適性への影響は検討されてきたが、移動の計画から目的地への到着までの各移動局面から構成される移動経験全体を通した快適性については検討が十分ではない。また、コロナ禍による鉄道を取り巻く環境の変化によって、移動経験に基づく快適性も変化した可能性がある。本研究ではコロナ禍前およびコロナ禍中に鉄道を利用した移動経験のある旅客の快適性について検討を行った。コロナ禍前において各移動局面の快適性を説明変数、移動経験全体の快適性を目的変数とする重回帰分析を行った結果、全ての局面が正の影響を与え、移動経験全体の快適性を約7割説明可能であった。また、この重回帰式でコロナ禍中の快適性評価を約8割の精度で予測可能であり、コロナ禍の影響によらず各移動局面の快適性から移動経験全体の快適性を予測できることが示された。