抄録
ストループ課題などによって得られる干渉効果は,課題文脈によって変動し,不一致試行の出現確率が高い事態の方が,それが低い事態に比べて減少する。また,動機づけも干渉効果に影響を及ぼし,正答に応じた報酬があるときはそれがないときに比べて,干渉効果の減少を導く。しかし,このような動機づけが課題文脈の処理に及ぼす影響は明らかではない。そこで本研究では,不一致試行の出現頻度を操作した干渉課題に対して,正答に応じた報酬(接近動機づけ条件),あるいは,誤答に応じた罰(回避動機づけ条件)を与え,動機づけが干渉効果に及ぼす影響を検討した。その結果,接近動機づけ条件において,課題文脈に応じた干渉効果の変動は見られなかったが,回避動機づけ条件においては,不一致試行の出現頻度に応じて干渉量が変動した。これらは,動機づけと認知的制御の相互作用は,接近動機づけと回避動機づけの動機づけによって異なる可能性を示唆している。