抄録
時間的展望の個人差は健康行動と関係することが示されている。本研究ではバランスの取れた時間的展望(BTP)と尿失禁の受診経験・受診意図,重症度との関連を検討した。ZTPIのクラスタ分析の結果,非BTP群・BTP群・低TP群に分類された。尿失禁の重症度は,国際前立腺症状スコア(IPSS; 本間他, 2002),国際尿失禁会議質問票 (ICIQ-SF; 後藤他, 2001),過活動膀胱症状質問票(OABSS; 本間他, 2005)により測定し,軽症と中等症重症に二分した。受診経験・受診意図の有無別に,クラスタ(3)×重症度(2)のクロス集計表を作成しχ2分析を行った結果,受診経験無群・受診意図無群における中等症重症の割合が非BTP群で有意に高かった。尿失禁は命に関わることは少ないがQOLを大きく低下させる疾患である。受診しない非BTP群の中には中等症重症患者が含まれる可能性が高いため,非BTP群に対しては受診を促す個別の声かけなどBTP群よりも丁寧な働きかけが必要であろう。