抄録
Orghian & Hidalgo (2020) は、ノイズにより部分的に遮蔽された顔は、ノイズのない顔よりも魅力度が上昇することを明らかにし、魅力度の高い平均顔によって情報の不足を補完しているため魅力度が上昇すると解釈した。しかし、これはあくまで間接的な解釈である。本研究は形態情報の不足した顔の観察時における平均顔補完の可能性についてより直接的に検証することを目的とした。顔を観察し、その顔の典型性(平均顔との距離) を操作した選択肢の中から観察したと思う顔を選択するBest Likeness課題と、顔の典型性評価を行った。その際,観察対象の顔のノイズの有無を操作した。 Best Likeness課題の結果、ノイズのある顔を観察したときはノイズのない顔を観察した時よりも典型性の高い顔がより多く選択された。一方ノイズの有無による典型性評価の違いはなかった。Best Likeness課題の結果より、形態情報の不足した顔の観察時には平均顔補完が起こることが示唆された 。