抄録
系列位置効果は有名な記憶現象であるが,実験室外での検討はほとんどない。本研究は14日間の日誌調査とその直後(15日目)に実施された事後調査によって日々のエピソード記憶における系列位置効果を検討した。日誌調査で調査協力者は毎日,その日にあった「いいこと」について自由記述を行った(記憶符号化)。事後調査では,日誌調査日程の前半後半それぞれから無作為に選ばれた日にあった「いいこと」について自由記述を行った(記憶検索)。符号化時と検索時の記述内容の類似度を記憶の正確さと想定し、深層学習技術による定量化を行った。訓練済み深層学習言語モデルであるRoBERTaを用いて,それぞれの記述内容をベクトル化し,それらの相関係数(のZ変換値)を類似度/正確さの指標とした。回帰分析により、符号化日が検索日に近いほど、記憶が正確であるという結果が得られた。このことは,日常のエピソード記憶での新近性効果を示す。