抄録
COVID-19流行は,マスク装着顔の研究を推進した。マスクの装着によって顔の魅力は高まると予測するモデル(増幅モデルOrghian & Hidalgo, 2020)と,これに反する平準化モデル(Miyazaki & Kawahara, 2016)がある。本研究は自由選択課題を用いてこれらのモデルを検証した。参加者は,伏せた顔写真カード二山から一方を選び1枚ずつめくった。実験1では高魅力の素顔男性写真のみを含む山と,同マスク装着顔男性のみを含む山を設けた。もしマスク装着が顔魅力を高めるならば,マスク装着顔のみの山が報酬となり選択的にめくられると予測される。実験の結果,増幅モデルには反して,女性参加者は素顔の山を選択しやすかった。一方,男性参加者はそうした傾向を示さなかった。実験2では高魅力の素顔女性顔カードと同マスク装着顔カードの二山を設けたところ,実験1に一致して男性参加者のみが素顔の山を選択した。これらの結果はマスク装着による増幅モデルよりも平準化モデルを支持した。(397字)