抄録
対人距離は,相手との関係性や性別など様々な要因によって影響を受けることが知られている。本研究は,衛生マスク(以降,マスクと表記)の着用有無および着用するマスクの色の違いが正面方向の対人距離に及ぼす影響を実験的に検証した。実験では,マスクの着用有無及びマスクの色(市販の不織布カラーマスクの色を参考に選定した5色)を操作した男女の顔刺激をモニタに表示した。椅子に着座し,相手と対面して会話する場面を想定して適当な位置と判断できる地点までモニタに接近することを参加者に求め,参加者が停止した位置からモニタまでの距離を測定した。測定した対人距離を分析した結果,マスク非着用の顔刺激に比べてマスク着用の顔刺激に対する対人距離が有意に小さいこと,また,女性参加者において黒マスク着用の顔刺激に対する対人距離がその他のマスクの色に比べて有意に大きいことが示された。