抄録
「大」「小」といった物体の大きさを喚起する意味情報が持ち上げ動作を含めた到達把持動作の運動学的特性や把持力に及ぼす影響を検討した.把持対象物体(直方体,長さ4 cmと6 cmの2種類)には力覚センサーを導入し,各物体に「大」あるいは「小」の文字ラベルを貼付し意味情報条件として2条件を設定した.参加者は動作開始前に把持物体に貼付した文字ラベルを認識し,親指と人差指で物体を把持後,持ち上げ動作を行った.親指・人差指間距離最大値と最大把持力について分析を行った結果,「大」の時に「小」の時よりも指間距離最大値と最大把持力は大きくなった.Gentilucci et al. (2000)やGlover and Dixon (2002)により意味情報が運動学的特性に影響することは明らかになっていたが,把持力計測を新たに導入し,持ち上げ動作時の把持力調節においても意味情報が影響することが示された.