抄録
ある人物を見かけて知人だと思ったが、それが別人であることが明らかになったという経験をすることがある。このような「人違い」現象がどのような原因でどの程度生起するのかに関する実験的検討はあまり行われていない。そこで本実験では、Xと待合せをしている際に、Xと服装が類似しているA、または顔が類似しているBが現れた場合、どの程度人違いが生起するのかを検討した。その結果、服装類似群・顔類似群でともに50%を超える参加者が少なくとも一瞬は人違いをしたと報告した。「Xに自分から声をかけた」という明確な行動指標を基準とした場合でも、25%程度の参加者が人違いをしていた。これらのことから、待合せ事態では一定程度人違いが生起することが実験的に示された。また、知人がその場にいるかもしれないという予期のある事態では、人違いの原因として服装が顔と同程度の大きな寄与を果たすことが示唆された。