抄録
人違いとは,遭遇したある人物(A)を別の知人(X)だと誤って同定してしまうことである。人違いについての先行調査研究では,AとXの顔の類似性だけでなく,服装の類似性もその生起に寄与することが示唆されている(伊東・三浦・島根, 投稿中)。そこで本研究では,顔と服装の類似性が実際の人違いの生起にどのように影響するかを実験的に検討することを目的とした。具体的には,Xと服装が類似しているA’,および顔が類似しているA”の二人が,Xであると誤同定された際の確信度をフィールド実験によって比較した。その結果,参加者が最初にA’もしくはA”を見た時の確信度は同程度であったが,A’は時間経過とともに確信度が低下するのに対しA”は上昇することが明らかとなった。この結果は,顔と服装の類似性が人違いの生起に別々に寄与する可能性を示し,我々の人物同定の処理過程の時間的ダイナミクスを示唆している。