抄録
潜在連合テスト(IAT)や自尊感情を用いた研究より,性格特性と偏見に関連があることが示唆されている。速水 (2006) によると仮想的有能感は,他者軽視を通して,無意識のうちに真実でない仮想的な有能感を得ようとするという潜在的なプロセスを含むものであるとしている。この仮想的有能感は他者軽視と同義ともいえ,潜在的な偏見や差別意識の指標としての可能性が考えられる。そこで,本研究は自人種と他人種の顔に対するIATによる偏見態度と仮想的有能感尺度の関連についてオンライン実験で検討した。その結果,IATの D スコアより,他人種に対して潜在的な回避傾向が示された。また,Dスコアと仮想的有能感尺度得点との間に弱い相関がみられたことから,自人種顔と他人種顔におけるIATと仮想的有能感尺度に関連が示された。これらのことから,仮想的有能感は潜在的な偏見や差別意識の指標として有効である可能性が示唆された。