抄録
「かわいい」顔刺激の弁別能力と自閉症特性の関連について、定型発達者と自閉スペクトラム症(ASD)者を対象として検討すると共に、かわいい顔刺激を見ることが、その後の作業能力に及ぼす影響について検討した。先行研究で使用されている「かわいい」顔刺激と「かわいくない」顔刺激の弁別課題を実施したところ、定型発達者においては、その自閉症特性(AQ)が低い者ほど、かわいくない顔刺激をかわいいとする傾向が高まることが明らかとなった。また、ASD者では、こうした傾向が明確でなかった。これらの結果は、自閉症特性が低い者ほど、顔刺激をその物理的特徴によらず、かわいいと評価することを示している。かわいい顔刺激を見ることが、その後の作業能力に及ぼす影響は明確でなかった。