抄録
ポジティブ刺激の1つとして「推し」を取り上げ,推しによる注意の捕捉の特徴を検討した。実験では,参加者自身の推し人物の画像と,推しではない人物の画像を使用して,注意の引きつけられやすさを示す定位バイアスと,解放のされにくさを示す解放困難バイアスの両側面を測定可能な修正ドットプローブ課題(Rudaizky et al, 2014)を実施した。その結果,推しに対しても非推しに対しても定位バイアスが見られたが,推しと非推しで定位バイアスの大きさに違いは見られず,推しは注意を引きつけやすいわけではないことが明らかとなった。解放困難バイアスは,第1セッションにおいては推しにおいてのみ負のバイアスが見られ,推しは非推しよりも注意が解放されやすいことが明らかになった。これは,推しの情報が素早く処理され,逆方向に注意が向かう復帰抑制が生じているためだと考えられる。