自由電子レーザー技術の進歩によって,フェムト秒レーザーパルスによる原子や分子の多光子過程を,極紫外領域で調べることができるようになった.本稿では,ヘリウム原子の 2光子電離における光電子角度分布の理論研究を紹介する.2光子電離は最も基本的な非線形過程の1つであるが,共鳴パスと非共鳴パスの競合という視点からパルス幅依存性や波長依存性を考察すると,従来の光源ではとらえられなかった新しい物理が見えてくる.
ポジトロニウム負イオンは,2個の電子と1個の陽電子から構成される3体の束縛状態である.アルカリ金属を蒸着したタングステン表面に低速陽電子を入射することによって,ポジトロニウム負イオンが従来よりも遥かに高い効率で表面から自発放出する現象を観測した.この新しい方法で生成したポジトロニウム負イオンにレーザー光を照射して,電子とポジトロニウムに分離する光脱離過程の観測や,これを利用したポジトロニウムビーム生成法の開発を進めている.本稿ではこれらの成果を中心として,新しいポジトロニウム負イオンの生成法とその応用研究について述べる.
ガラスや樹脂などの絶縁体でできた,内径が100nm~数100μmの細管(キャピラリー)にキロボルトやメガボルトの電圧で加速されたイオンビームを入射すると,ある割合で,入射前の電荷や運動エネルギーを保持したまま通過してくることが知られている.この現象を応用すれば,今まで帯電を嫌ってビーム光学系にあまり使われてこなかった絶縁体をむしろ積極的に使ってビーム偏向素子やマイクロビーム生成ツールとして利用することができる.ビームのエネルギー・加速やキャピラリーの種類によって様々な実験やシミュレーション,更には応用を目指した開発が行われている.本稿ではその現状を紹介する.
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