2013 年 10 巻 5 号 p. 118-
ポジトロニウム負イオンは,2個の電子と1個の陽電子から構成される3体の束縛状態である.アルカリ金属を蒸着したタングステン表面に低速陽電子を入射することによって,ポジトロニウム負イオンが従来よりも遥かに高い効率で表面から自発放出する現象を観測した.この新しい方法で生成したポジトロニウム負イオンにレーザー光を照射して,電子とポジトロニウムに分離する光脱離過程の観測や,これを利用したポジトロニウムビーム生成法の開発を進めている.本稿ではこれらの成果を中心として,新しいポジトロニウム負イオンの生成法とその応用研究について述べる.