原子衝突学会誌しょうとつ
Online ISSN : 2436-1070
サイズ・組成選別酸化鉄クラスター正イオンとメタンの反応:火星大気中でのメタン消失のモデル研究
荒川 雅河野 聖関根 康人寺嵜 亨
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2025 年 22 巻 2 号 p. R008-

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抄録

火星大気中の化学過程に関連して,酸化鉄クラスター正イオンFenOm+とメタン(CH4,CD4)との気相反応を観測した.クラスター上でのC–H / C–D結合の開裂を伴うメタンの脱水素,すなわちFenOmCH2+ / FenOmCD2+およびFenOmC+の生成が観察され,その反応性はサイズ,組成依存性を示した.例えば,Fe3O+とFe4O+の反応速度係数はCH4,CD4ともに同程度で,それぞれ1 × 10−13,3 × 10−13 cm3∙s−1と算出された.これらの反応速度係数に基づいて見積もると,火星大気中に107 cm−3程度の低密度の酸化鉄クラスターが存在すれば,火星で稼働するNASAの探査車キュリオシティが観測したメタンの急速な消失を説明できることが示された.

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