抄録
光合成反応中心におけるエネルギー変換膜での高効率な電子移動反応は分子組織体の場と非共有結合のつくる環境によって大きく支配されており, これを分子レベルで解明することは光をトリガーとするナノスケールの光電変換分子デバイス開発の先導的方法論を与えると考えられる。本稿では, ポルフィリン誘導体の空間配置を制御して構築された光機能化ポルフィリンシステムの物性が, ポルフィリン単分子の性質ばかりでなく, 高次構造に基づく超分子性を反映することを述べた。インターフェースとして用いたカリックスアレーンの水酸基が2点水素結合でベンゾキノンを取り込み, さらに電子移動の媒体としても作用することを見出した。また, ポルフィリン二量体を分子認識部位としたカリックスアレーンは, フラーレンC70を選択的に取り込む分子ピンセット機能があることを明らかにした。亜鉛ポルフィリンとピロメリットイミドの空間配置を精密に制御した分子を設計することにより, スルースペース (0.5nm) を介しての光誘起電子移動反応が進行することを分子レベルで初めて示した。