抄録
本稿は、故人の姿を模した2つの人形「遺人形」と「おもかげ人形」を対象とし、これらの「人形を介し、生者(遺族)はどのように死者を認知しているのか」を問いとする。死者と人形という非生者、非人間と生者との関わりをとらえる枠組みとして、岩田慶治のアニミズム論、アクターネットワーク理論を補助線とした。フィールドワークで語りを①人形をめぐる癒しの構造、②人形の身体性と遺影との違い、③人形がもつ「余地」とAI故人という3つのテーマに分け論じた。続く考察では、分析テーマの③の人形がもつ「余地」に死者はどのように立ち現れるのかについて、タイラーと岩田の2つのアニミズム論を論じた長谷(2009)の論考から「見顕し」という対象認知の仕方を援用し論じた。また、今後の課題として、VRやAIといった最新技術をつかって「見顕し」の構図を実現するにはどのようなアプローチが有効なのかを考える手がかりとして、岡田(2012)の「弱いロボット」という概念を参照し、弱いロボットと故人を模した人形の「引き算のデザイン」という共通点に着目し、未来の死者の表象について考察した。