抄録
乳化特性を有する卵は油脂を配合しやすく,その加熱ゲルは特有のテクスチャーとなることが知られている。しかし,実際の調理過程における卵液への油脂配合の影響を検討した報告はみあたらない。本研究では,乳脂肪クリームあるいは菜種油を加えた卵液の加熱過程でのレオロジー特性,加熱ゲルの構造とテクスチャー特性について検討した。動的粘弾性測定の結果,10℃の線形領域は,乳脂肪クリーム配合で広く,菜種油配合で狭くなり,80℃の線形領域は乳脂肪クリーム配合で狭く,菜種油配合で広くなった。また,乳脂肪クリームあるいは菜種油を配合した卵液をオムレツ状に加熱したゲルは,走査電子顕微鏡観察の結果から小さな空隙を多く有する多孔質な構造であることが示された。さらに,テクスチャー測定,官能評価から乳脂肪クリームを配合したものは,脆弱なゲルであることが確認された。これらの結果から,乳脂肪クリームあるいは菜種油の卵液への配合は,卵液の加熱過程でのレオロジー特性および加熱ゲルの構造を変化させ,脆弱あるいはしなる様な硬さ(軟らかさ)のテクスチャーを生じさせることが示された。