日本調理科学会誌
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食塩水に浸漬した豚ロースブロック肉とミンチ肉の官能特性の比較
橋場 浩子牛腸 ヒロミ小見山 二郎
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2015 年 48 巻 1 号 p. 26-30

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抄録

豚ロースブロック肉中の食塩の拡散挙動を調べた結果,大根,凝固卵白,豚肉,ジャガイモ中の食塩の拡散に比べ食塩が浸透しにくいという結果が得られた。そこで,浸透がしやすい豚ロースミンチ肉を調製し,SEM観察を行った。ミンチ肉の筋線維が破壊されており,拡散プロファイルは他の食材のそれに近づいた。二元収着拡散理論を適用して,NaClのラングミュアー型および分配型の熱力学的拡散係数,DT(L)とDT(p)を求めたところ,ミンチ肉はブロック肉の約2倍大きいことがわかった。これらの結果に基づいて,ミンチ肉とブロック肉の感覚に及ぼすミンチの影響を官能評価により比較した。これら2種の豚ロース肉の官能評価の結果,2点識別法ではミンチ肉はブロック肉に比べて,有意に色が明るく,塩味が強く,軟らかかった(p<0.01)。これらの結果は色度測定,塩分測定,テクスチャー測定の結果に対応していた。2点嗜好法では,軟らかさに対する好ましさでミンチ肉が有意に好まれた(p<0.01)。以上の結果から,組織構造が煮物の味やおいしさに関与することが示唆された。

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© 2015 一般社団法人日本調理科学会
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