抄録
フライのモデル系として水噴霧加熱を使用し,低酸素雰囲気下の油脂劣化について検討した。油脂の加水分解の指標である酸価に着目して解析した結果,酸素濃度を2%に下げると水噴霧による水分が存在しても酸価の上昇は抑制されることが判明した。また,遊離脂肪酸やヒドロペルオキシドの添加は,この条件下での酸価上昇を惹起しなかった。以上の結果から,酸価は従来言われてきたような,高温と水分による単純なエステル加水分解の指標ではなく,初期の酸化中間体や活性化した酸素分子が促進的に働いてはじめて上昇するフライ油の酸化的劣化指標の一つであると考えられる。