2018 年 51 巻 3 号 p. 151-164
昭和30年代から40年代頃に広島県西部地域に定着していた家庭料理と暮らしの背景を聞き書き調査した結果から,家庭料理のあり方と今後の展望について提言する。対象者は4地区(広島市西区井口・佐伯区湯来,廿日市市地御前,大竹市南栄)で30年以上居住した60代以上の人とした。日常食は「ご飯,味噌汁,漬物」を基本に主にだしはいりこだしを用いた。家庭料理を工夫し,カレーライスやコロッケなどの洋風献立も食べた。ハレの日は家庭で行事食を手作りし,御逮夜(おたんや)では煮ごめを食べた。間食は農作物を使ったもの,駄菓子類(チョコレートやガム)やバナナ,手作りの菓子であった。伝え継ぎたい家庭料理は,寿司,鯛そうめん,煮ごめ,刺身こんにゃく(山ふぐ),ちまき,のっぺ汁,もぶりであった。現代は食の外部依存が進んでおり,家庭料理のあり方が変化しているが,家庭料理は家族を結びつけるとともに先人の知恵を次世代に伝え,家庭の味を伝承する役割をもつ。家庭料理には家族を大切に思う人々の思いが現れていた。家庭料理の役割を再認識し,家庭での料理作りを実践してほしいものである。