調理中の小麦グルテンの形成抑制が要点となる天ぷらの調理を容易にするため,我々はグルテンを形成しない雑穀粉の利用を検討している。本論文では,雑穀の大麦粉,ソバ粉,ハトムギ粉を取り上げ,主穀の小麦粉,うるち米粉,もち米粉を対照にそれぞれの天ぷら衣を調製し,天ぷら衣への雑穀粉の利用適性を評価した。
その結果,いずれの雑穀粉も揚げ衣の臭気指数相当値がバッターの状態と比較して低下したことから,揚げ加熱は雑穀粉の調理に適すると考えた。また,揚げ加熱時の水と油の交代現象は穀物粉の種類により異なった。ソバ粉は特有の灰褐色が好まれず,内層粉を使用することによる色の改善が必要であった。ハトムギ粉はうるち米粉と類似した特性を有し,色以外は嗜好性が低かった。しかし,ハトムギ粉も小麦粉との混合により有効利用できると考える。一方大麦粉は,小麦粉と類似した品質と高い嗜好性を有していたことから,天ぷら衣として単独で利用可能であると評価した。