日本調理科学会誌
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炊飯液のpHの違いが飯の炊飯特性および米のタンパク質,デンプンに与える影響
大石 恭子金成 はるな大田原 美保香西 みどり
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キーワード: 米飯, 老化, 炊飯液, pH, 緩衝液
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2020 年 53 巻 3 号 p. 197-206

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抄録

 pH 3およびpH 9の緩衝液で炊飯すると,飯の付着性の増加および冷蔵に伴う老化の抑制効果が示された。一方でpH 5の緩衝液で炊飯すると米飯の老化の促進が認められた。米飯表層を覆う固形分およびタンパク質はpH 3およびpH 9で炊いた飯において多かった。米から溶出したタンパク質のSDS-PAGE分析の結果,酸性条件ではアスパラギン酸プロテイナーゼによるタンパク質の低分子化,アルカリ性条件ではジスルフィド結合の還元によるタンパク質の可溶化が示された。これらの変化により酸性およびアルカリ性条件においてデンプンの吸水,膨潤,糊化が促進され,飯表層に付着する成分の増加に寄与することが示唆された。一方でpH 5の条件ではタンパク質の可溶化が抑制されており,デンプンの膨潤,糊化が妨げられることが老化を促進させる一因になることが示唆された。

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