本研究では,シューペースト中のソバデンプンの分布を調査し,ソバデンプンの分散状態の変化に伴うシューの膨化状態を評価した。
ソバ粉におけるデンプンは崩壊した胚乳細胞単位で存在し,小顆粒状デンプンはわずかに認められた。この分散状態はシューペーストに加工しても変化しなかった。超音波ホモジナイズ(UH)処理は胚乳細胞に存在するデンプン粒の流出に効果的であったが,ソバタンパク質は低分子化した。このようなタンパク質組成の変化により,ソバ粉シュー生地が乳化しにくくなり,ソバ粉シューの膨化状態は改善されなかった。
一方,他の食品由来のデンプンを数種類添加したソバ粉シューは,いずれも硬くてもろい品質を示唆する破断特性値を示したが,ソバ粉シューの比容積は増加し,膨化性が向上した。特に,シュー生地のG’が低いタピオカおよびくずデンプンを添加することで,膨化性を向上させる効果が期待できると考える。