2021 年 54 巻 1 号 p. 33-41
1~2 mgの極少量のサンプル量で示差走査熱量計(DSC)を用いた空気雰囲気中,一定速度で昇温して得られる酸化開始温度(IOT)の発熱挙動は,不飽和脂肪酸を主成分とするサラダ油(大豆油,なたね油)の酸化劣化にて生じるヒドロペルオキシドの蓄積量に比例して低温側にシフトすることを見出した。このことにより,一般に揚げ物に多用されている不飽和脂肪酸が主成分のサラダ油の劣化度を推定する指標になり得ることを明らかにした。また,バター等に代表される飽和脂肪酸は,劣化時,ヒドロペルオキシドの蓄積量が少ないことから,発熱量が不明瞭となり適用不可能である。本手法は,従来から用いられている油脂の劣化度判定手法である酸価,動粘度,色差と同様の劣化測定挙動を示すことから,従来不可能であった揚げ物食品個々の劣化度合いの市場調査が可能になると考えられる。