日本調理科学会誌
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54 巻, 1 号
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総説
報文
  • 阿相 優香, 山形 純子, 松本 美鈴
    原稿種別: 報文
    2021 年 54 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,牛乳の代わりに豆乳およびアーモンドミルクを用いて調製したカスタードプディングの物性と嗜好性について検討した。その結果,加熱中のアーモンドミルク試料の卵液の温度上昇が遅れ,ゲル形成に要する加熱時間が2倍となった。カスタードプディングの色については,牛乳試料は白色が強く,豆乳試料は黄色みが強かった。カスタードプディングのテクスチャーは,牛乳試料が最もかたく,次いで,豆乳試料,アーモンドミルク試料の順にやわらかくなった。割合1:3の牛乳試料と同程度の破断応力を示す配合割合は,豆乳試料1:2.4,アーモンドミルク試料1:1.5であった。同一の破断応力を示す試料の官能評価の結果,アーモンドミルク試料はやわらかく甘味が強く牛乳と同程度に好ましいと判断された。一方,豆乳試料は,かたくにおいが好まれなかった。

  • 高橋 敦子, 藤井 恵子
    原稿種別: 報文
    2021 年 54 巻 1 号 p. 14-23
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     本研究では雑穀パフを破断する際の測定条件の検討を行い,雑穀パフの特徴を明らかにすることを目的とした。試料として発芽玄米,はと麦,大麦,アマランサスの4種の雑穀を選び,処理圧力を0.1~1.1 MPaとし,試料を膨化させた。破断特性は圧縮速度を4水準に設定し,破断特性値を求めた。

     パフの断面の組織構造より,処理圧力は,発芽玄米,はと麦,アマランサスは0.9 MPa,大麦では1.1 MPaが最適と考えられた。雑穀パフの膨化を妨げる要因として,雑穀の脂質含量の多さや,胚乳に比べて外皮の割合が多いことが示唆された。

     4種の雑穀パフの荷重-変形曲線より,圧縮速度が速くなるに従って破断ひずみは大きくなり,みかけの弾性率の値は小さくなった。

     雑穀パフの物性測定では一粒法,40 mmφ のプランジャー,圧縮速度0.1もしくは1.0 mm/sを用いることが,適していることが示された。

ノート
  • ―ネキ水の水飴に着目して―
    村上 陽子
    原稿種別: ノート
    2021 年 54 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     打ち物は,干菓子の一つである。打ち物「和三盆」は,和三盆糖とネキ水(水飴を含む水)を材料として,これらを成形して作られる。打ち物の材料である水飴に着目すると,我が国には麦芽糖化飴がある。麦芽糖化飴は,穀物を麦芽で糖化して作られる。麦芽糖化飴は,高い香りと琥珀色を特徴とする伝統的な食品である。本研究では,打ち物の副材料である水飴に着目し検討した。麦芽糖化飴の種類が,打ち物「和三盆」の物理特性および食嗜好性に及ぼす影響について調べた。

     その結果,水飴の色彩構成は水飴の種類によって異なっていた。また,水飴を打ち物の材料(ネキ水)として用いた場合,水飴の色彩構成は,打ち物の色彩構成にも影響していた。麦芽糖化飴における原料の違いは,打ち物の硬さに影響を殆ど与えなかった。打ち物の食嗜好性は,ネキ水の材料として用いた水飴の香りや雑味に影響されていた。麦芽糖化飴を用いた方が,酵素糖化飴を用いた場合よりも打ち物「和三盆」の嗜好性は高かった。

  • 荒井 恵美子, 大武 義人
    原稿種別: ノート
    2021 年 54 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     1~2 mgの極少量のサンプル量で示差走査熱量計(DSC)を用いた空気雰囲気中,一定速度で昇温して得られる酸化開始温度(IOT)の発熱挙動は,不飽和脂肪酸を主成分とするサラダ油(大豆油,なたね油)の酸化劣化にて生じるヒドロペルオキシドの蓄積量に比例して低温側にシフトすることを見出した。このことにより,一般に揚げ物に多用されている不飽和脂肪酸が主成分のサラダ油の劣化度を推定する指標になり得ることを明らかにした。また,バター等に代表される飽和脂肪酸は,劣化時,ヒドロペルオキシドの蓄積量が少ないことから,発熱量が不明瞭となり適用不可能である。本手法は,従来から用いられている油脂の劣化度判定手法である酸価,動粘度,色差と同様の劣化測定挙動を示すことから,従来不可能であった揚げ物食品個々の劣化度合いの市場調査が可能になると考えられる。

資料
  • 植松 大壱, 宮崎 早花, 小八重 善裕
    原稿種別: 資料
    2021 年 54 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     本研究は,黒千石ダイズの種子を少量の水で限定吸水させることで,①アントシアニンの溶出を抑制できるか,②黒さ・噛み応え等の黒千石の特徴を活かした豆ごはんが調理できるかを検討した。マイクロプレート内で吸水させ,経時的に吸水率を測定したところ,乾燥種子1 gあたり1.9 mLの吸水条件が,十分な吸水の最低ラインであることが分かり,これを限定吸水量とした。浸漬吸水においては,限定吸水に比べて,アントシアニンの溶出が3倍に増えており,種皮の損傷も大きかった。アントシアニンの溶出は,吸水直後から起こっており,種子の損傷とは無関係だった。限定吸水と浸漬吸水とで,黒千石の豆ごはんを調理し,官能評価を行ったところ,黒さと,食感の項目において,限定吸水のほうが高い評点を得た。以上の結果から,一般に行われている浸漬吸水よりも,限定吸水のほうが,黒千石大豆の色を黒く,食感をよくすることができる。

  • 山本 真子, 井奥 加奈, 岸田 恵津
    原稿種別: 資料
    2021 年 54 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     蒸し調理におけるカブの甘味と嗜好特性について,ゆで調理及び電子レンジ調理と比較して検証した。加熱調理によりカブは軟化し,ショ糖,ブドウ糖,果糖を合計した糖総量は蒸し調理では非加熱と有意差がなかったが,電子レンジ調理は有意に多く,ゆで調理は少なかった。官能評価では,蒸し調理試料の甘さとジューシーさの評点が非加熱よりも有意に高く,総合評価で好ましいと評価された。電子レンジ調理試料も蒸し調理と同等に甘いと評価された。蒸し調理後の糖総量は変化せず,甘味の増加と糖含量は対応しなかった。加圧試験から,蒸し調理では糖が溶出することなく組織が軟化し,滲出液に含まれる糖により甘さとジューシーさが増すと考えられた。電子レンジ調理により甘く感じられるのは,水分が蒸発して含有糖濃度が上昇するためと示唆された。相関分析より,蒸し調理試料の総合評価は,甘さ及びジューシーさと正の相関が認められた。いずれの加熱調理でも,甘さと総合評価に正の相関があり,甘いと好ましいと評価されることが示唆された。

講座
教材研究
  • ―大学編―
    小林 理恵, 露久保 美夏
    原稿種別: 教材研究
    2021 年 54 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

     世界的感染拡大の終息が未だにみえない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であるが,令和2年3月末日に首相官邸に「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置され,感性症対策等が講じられている。その基本的対処方針に則り,各教育機関において,4月の新学期から,講義・実験実習授業ともに開講形態に工夫を余儀なくされる状況となり,前例もないまま,教職員・学生ともに手探りの状態で授業を進めてきた。特に,対面授業において実際に技術を習得することが目的の一つである調理実習では,担当教員は,可能な実施内容の検討から始まり,教材の作成,課題・評価方法の考案など,山積した事項の対応に追われ,脱兎のごとく数か月が過ぎていった。(一社)日本調理科学会において,会員の皆様にご協力を頂いた「COVID-19下における調理学実習の実施に関するアンケート」の結果より,授業開始時期を遅らせ,授業形式も多面授業と遠隔授業を組み合わせるなど,対応に苦慮されながらも実施されたことが拝察された。

     この度,皆様方との情報共有の一助となれば幸いとの思いより,調理実習の実施例のご紹介を大学編および高校編として企画した次第である。本号では,はじめに大学編として東京家政大学の小林理恵先生と東洋大学の露久保美夏先生に,先生方が実施された調理実習の内容をご紹介頂く。(日本調理科学会編集委員会)

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