2022 年 55 巻 3 号 p. 155-163
日本のだしは和食文化の根幹である。本研究では,試料として手作りと即席パックのかつお昆布だしを用いた。だしの生化学的成分である遊離アミノ酸,核酸化合物,有機酸を分析した。味覚活性値(TAV),等価うま味濃度(EUC),主成分分析(PCA),官能分析など,さまざま視点から,日本のだしの“味”を解明することを目的とした。手作りと即席パックだしの特性は,PCAによって確認できた。手作りだしと即席だしの相異は官能分析によって有意に識別できることがわかった。手作りだしは,4種類の即席パックだしと比較して有意に好まれた。手作りと即席パックだしは,いずれも,アスパラギン酸,グルタミン酸,IMP,AMP,酢酸などのさまざまな生化学的成分を含む複数の味を特徴としていることがわかった。なお,手作りだしとパックだしは,生化学成分の濃度についてはさまざまであった。本データは,複数の生化学成分が“だし”の味を説明していることを示唆したものである。