2023 年 56 巻 5 号 p. 209-218
近代の日本の食生活において,ジャガイモがハレ食に定着していた地域の特徴およびその要因を明らかにすることを目的とした。『日本の食生活全集』を資料として,1930年前後の大正末期から昭和初期における全国的な傾向を調査した結果,東日本の寒高冷地などにおいて,主に煮物や汁物の材料としてジャガイモがハレ食に利用されていた。
ハレ食が多くみられた山梨県および岐阜県の山間部の地域について,日記,紀行文,市町村誌,民俗調査報告書などを資料として詳細な調査を行った。いずれの地域でもジャガイモが江戸時代に導入され,絶えることなく盛んに栽培されてきたこと,様々なハレの場面にジャガイモが取り入れられていたことが分かった。長い間ジャガイモが利用されるなかで,地域の食文化に定着し,大切な食べ物として受け継がれ,ハレ食にも利用されるようになったと考えられた。