2024 年 57 巻 6 号 p. 358-368
広島県芸北山間地域の2地域,中部台地の1地域に,30年以上居住し家庭の食事作りに携わってきた60~70歳代の女性5名を対象に,昭和30~40年代の家庭料理について,平成25・26年に聞き書き調査を行った。
本報告では,3地域で伝え継ぐ料理として挙げられた「田植え食:さんばいさん」とその伝承方法の事例を報告した。同時に,広島県内の各自治体の歴史資料から,さんばいさんに関する記載事項を確認した。3地域の「さんばいさん」では,「丸いきな粉むすび」や「朴葉に包んだ豆飯」,「ちしゃもみ」が供された。「さんばいさん」は,広島県では,福山地域を除く自治体の歴史資料で確認できた。資料では,さんばいさんを田んぼで食べる,「しろみて」のとき食べる等食べ方や料理内容の相違がみられた。さらに,実践場面における教育効果に基づき,さんばいさんのような家庭料理を次世代へ伝承するためには,地域と連携して学校給食を生きた教材として活用することが有効な方法のひとつであると考える。