抄録
本研究では,生鮮野菜および果実を用いて,各種浸漬液の無機成分溶出率に及ぼす影響について検討した.その結果,キャベツ,ダイコンおよびリンゴでは,食塩水に浸漬することによって,カリウム,マグネシウムおよびカルシウムは水道水に浸漬する以上の溶出率がみられ,さらにキャベツにおいては,食塩濃度が高くなるほどその溶出が一層促進される結果となった.またゴボウでは酢酸水によってカリウムが,食塩水によってカルシウムおよびマグネシウムが一層溶出され,エノキダケでは高濃度のミヨウバソ水でカリウムの溶出が著しく,マグネシウムは酢酸水での溶出が増大した.以上のことから,浸漬操作は,食品材料の褐変防止,アク成分除去,食味改善などの効果をはかると同時に,各種無機成分の流出にも明らかに関与することがわかった.それぞれの材料について,浸漬目的を明らかにし,処理に付随する諸影響を考慮に入れながら浸漬操作に臨みたい.