日本調理科学会誌
Online ISSN : 2186-5787
Print ISSN : 1341-1535
ISSN-L : 1341-1535
実態調査による雑煮の地域的な特徴
名倉 秀子渡辺 敦子大越 ひろ茂木 美智子
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 36 巻 2 号 p. 146-156

詳細
抄録

雑煮の構成内容から地域の特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,各地域に在住する学生の家庭を対象に,アンケートによる実態調査を行った.雑煮のもち,だし,調味料,具,盛り付けの器,伝承など雑煮の地域的な特徴について以下のような結果が得られた.
1)もちの形態は角もちが北陸,東海以北,丸もちが近畿以西にそれぞれ80%以上出現した.もちの扱い方は「焼く」が関東以北4地域,「ゆでる」が北陸,中国,北九州の3地域「そのまま汁へ」が東海,近畿1,近畿2,四国,南九州の5地域に分類できた.
2)だしの種類は魚介類が東海および中国以西,肉類が東北,海藻類が北海道,北陸,九州,野菜・きのこ類が九州でやや高めの出現率を示した.
3)調味料の種類から,すまし仕立て系が北海道,東北,関東1,関東2,北陸,東海,中国,北九州,南九州の9地域,味噌仕立て系が近畿1,近畿2,四国の3地域に分類できた.
4)具の種類は人参,大根,鶏肉が全国的に高い割合で出現した.野菜類の緑色系において,北海道の三つ葉,東北のせり,関東1の小松菜,関東2と北陸の三つ葉,東海のもち菜,近畿1の水菜,近畿2と中国のほうれん草,北九州のかつお菜,南九州の京菜にみられるように地域に限られた野菜や正月の期間だけの野菜が出現した.また,かまぼこやなるとの出現は地域の特徴を捉えていた.
5)盛りつけの器の材質は全国的に椀の出現率が70%を占め,器の内側の基調色では朱色の出現率が高く,これらについて地域的な特徴は見出せなかった.器の大きさは最頻値が見られた.
6)雑煮の調理担当者は全国的に「母」が83.5%以上を占め,母方系統の雑煮を20~29年前から調理していることが明らかとなり,伝承について地域的な特徴は見出せなかった.

著者関連情報
© 一般社団法人日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top