日本調理科学会誌
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中部地方における木綿豆腐の地域性
添田 孝彦山崎 勝利
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2003 年 36 巻 3 号 p. 266-273

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抄録

1.原料大豆は中部地方平野部では輸入大豆から国産大豆への切り換えが,凝固剤はすまし粉からにがり使用への移行が顕著であった.消泡剤や水に対する生産者側の対応は低かった.
2.山間部での聞き取りの結果,8社すべてで煮取り法が採用され,1社のみは豆腐の種類によって煮取り法と生絞り法を併用していた.山間部の豆腐料理としては味噌汁の他に「鍋物」,「さしみ豆腐」,「天ぷら」および「豆腐田楽」が現在もなお食べられている.
3.無機質分析結果から,凝固剤はすまし粉からにがりへの切り換えを裏づけるものであり,五訂日本食品標準成分表記載のMgおよびCa含量とは乖離していた.Na含量はほとんどの豆腐で通常含まれる量よりも多く検出され,Na由来の添加物が添加されていると考えられた.固形分は中部地方3地域間で明らかに地域差がみられた.
4.官能評価による味・風味の強さは中部地方3地域間では山間部が最も高かったが,太平洋側平野部と日本海側平野部では差はみられなかった.一方,かたさは山聞部>日本海側平野部>太平洋側平野部の順に高く,かつ,それぞれの地域間で危険率1%以下もしくは5%以下で有意差が認められた.
5.ゲル強度は官能評価によるかたさと同様中部地方の3地域間で大きな差がみられた.太平洋側平野部のゲル強度に比べて日本海側平野部は1.3倍,山間部は3.2倍を有しており,豆腐物性の地域間での客観的比較が可能となった.

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