日本調理科学会誌
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数の子の塩抜き過程における味成分の挙動
春日 敦子荻原 英子青柳 康夫
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2007 年 40 巻 5 号 p. 329-336

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抄録
低濃度の食塩水を用いた脱塩は“呼び塩”と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8 倍多かったが, 3% 食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに, 水で15 時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は, 3% 食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では, 味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70% 占めていた。これらの,結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。
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