抄録
本研究の目的は,大学生の情動コンピテンス,心の病に関する否定的認識が学生相談室のカウンセラーに対する援助不安に及ぼす影響を明らかにすることである。大学生357名に調査票を配布し,325名の調査票を回収した。そのうち,欠損値が認められなかった291名を分析の対象とした。情動コンピテンス尺度は因子分析され,「情動の表現と命名」「感情に対する尊重性」の2因子が抽出された。心の病に関する否定的認識尺度も因子分析され,「忍耐不足」「努力不足」「心の病の否定」の3因子が抽出された。援助不安は,呼応性への心配,汚名への心配が測定された。分析の結果,1)「呼応性への心配」については,「感情に対する尊重性」が負の関連,「忍耐不足」が正の関連を示した,2)「汚名の心配」については,「情動の表現と命名」「感情に対する尊重性」が負の関連,「忍耐不足」が正の関連を示した。以上の結果は,大学生の情動コンピテンスを高め,心の病に関する否定的認識を低めることで,大学生のカウンセラーに対する援助不安を低めることができる可能性があることを示していた。