The KeMCo Review
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一般論文
雪舟の潑墨技法をめぐって―雪舟等楊筆「山水図」(慶應義塾センチュリー赤 尾コレクション)を中心に
松谷 芙美
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2024 年 2 巻 p. 112-128

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抄録
江戸時代前期より、雪舟に対する評価は確固たるものとなり、近代には「画聖」としてのイメージが定着した。しかし近年、そのような固定観念に捉われず、雪舟の真の姿を追う研究姿勢が提唱され、新出作品も紹介されている。東福寺の了庵桂悟が雪舟の山水図の賛(藤田美術館所蔵)に、「画を論じること猶、詩句を論ずるが如く」と寄せたように、雪舟は日々絵に画僧としての心情を託し、求めに応じて、描き与えたのではないか。例えば、一気呵成に短時間で仕上げた絵として、潑墨山水図があげられる。慶應義塾が所蔵する「山水図」は、潑墨技法で描かれた小品で、短時間で生み出されたものと推測される。潑墨技法はその自由さゆえ、筆順や描き方のルールはないが、現代の美術家の助言をもとに、その成り立ちを検討することで、抽象性の高さゆえ、比較が難しい、潑墨技法の様式比較を試みる。
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