カウンセリング研究
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展望
コラージュ技法・療法の現状と課題
―2000年以降の研究動向―
青木 智子
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2011 年 44 巻 2 号 p. 167-178

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抄録
本論文は,先の展望論文を踏まえ(青木,2000a),2000年以降のコラージュ技法・療法の研究を概観し,傾向と問題点に言及した。現在,コラージュは対象領域を末期がん患者,重症心身障害者,脳損傷に対するリハビリテーション領域,デイケア,発達支援,学校や研修の場の自己啓発まで広げ,手法も工夫が凝らされている。2000年以降,心理臨床場面で用いられていたコラージュが,他領域に導入された結果,エビデンスを明確にすべく基礎的研究数が増加した。しかし,アセスメントを目的に集積された基礎研究は,疾患や障害に起因する臨床的特徴が作品に顕著な統合失調症,認知症患者を対象としたもの以外,安定した再現性が得られていない。そもそも,作品のどこまでを障害,どこまでを個人の心的内容の投影とみなすかは判断が困難で,作品のみによるアセスメント研究の難しさがうかがえる。今後,コラージュの解釈・理解には,作品から受ける印象を重視する手法でのアセスメント,障害や疾患,課題遂行の観察,心的世界を象徴する作品テーマの検討,系列的制作等の視点を加えるべきであろう。そのためにも,基礎・事例研究の相互の知見と研究が,コラージュを導入するさまざまな場面で生かされることを期待したい。
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© 2011 日本カウンセリング学会
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