抄録
本研究の目的は,「生活場面面接」の視点と技法を具体的な支援事例を通して提示することである。対象は,被虐待体験と親子の分離があり,非行・攻撃的行動等の問題行動を主訴に児童相談所の一時保護所に保護された小学5年の男児である。支援の結果,次のような重要な技法が明らかになった。すなわち,日常場面においては,子どもとの信頼関係性を築き肯定的な部分(強さ)を発見し伝えておくこと,「日常生活場面における出来事の治療的活用」を行うことである。次に,問題行動場面では,その出来事に起因する過去の体験への働きかけを意味する「過去と現在の出来事の統合技法」,自己肯定感の回復および歪んだ認知を対象者の長所で修正する「ストレングスによる認知の歪みの修正技法」を行うことである。これらは,どれか一つの技法を用いるのではなく,子どもの状態と現場にあわせて組み合わせて実施していくことが,重要であると考えられた。