抄録
本研究は、旅館業法に基づく宿泊施設を対象に、立地動向と地価への影響を検討する。さらに、今後増加が懸念される廃業宿泊施設にも着目し、その実態を明らかにすることを目的とする。調査の結果から、①簡易宿所は都市中心部から住宅地や工業地などへ立地拡散しており、2016年以降この傾向を強めていたこと。②簡易宿所は旅館・ホテルに比べ地価の低いエリアへ立地する性格である一方、回帰分析の結果、地価を上昇させる要因となっていること。③2018年度に廃業した宿泊施設の約9割が簡易宿所であり、かつ創業わずか3年未満で廃業するケースが多いこと。住宅として提供されるべき不動産に宿泊施設のような地価負担力の高い用途のみが進出できる状況を招く構図が確認できた。