抄録
【現場へのアイデア】パーソナルジムの高齢クライアントにはバランス能力が低い方が多く見
られ、若年層にも同様にバランス能力が課題となるケースがある。閉眼片足立ちテストは簡便
ながらバランス能力を有効に評価できる手法であり、特に姿勢保持時間の成績が高い人と低い
人ではっきりとしやすい。そのため、クライアントのバランス能力を把握するための手段とし
て適している。定期的にこのテストを実施することで、バランス能力向上を目指したトレーニ
ングプログラムの効果を評価し、必要な介入や指導内容の改善に役立てることができると考え
られる。
【背景】加齢に伴うバランス能力の低下は高齢者の転倒リスクを高めることが知られている
(Konrad et al., Laryngoscope ., 1999)。転倒による骨折は要支援・要介護状態を招くことが
多く、バランス能力の改善が非常に重要と考えられる。近年では高齢者層のスポーツ・健康志
向の高まりもあり(経済産業省、2014)、当ジムの会員も3割以上を高齢者が占めている。また、
当ジムでは初回体験時に閉眼片足立ちテストを実施して、会員のバランス能力を測定している。
そこで、会員のバランス能力と年齢の関係を調査した。
【方法】当ジムの会員47名(男性17名、女性30名)を対象に、初回体験時に閉眼片足立ちテス
トを実施した。対象者は利き足で片足立ちとなり、その姿勢保持時間を記録した。テスト中に
目を開けた場合、軸足の位置を変えた場合、軸足と反対の足を地面に接地した場合、手が壁や
地面に接地した場合に終了とした。記録した姿勢保持時間を用いて年齢との相関関係を分析し
た。p < 0.05を有意水準とした。
【結果】閉眼片足立ちテストの平均姿勢保持
時間は、17.3秒(標準偏差:22.7)であった。
また、姿勢保持時間と会員の年齢との間に
は有意な負の相関関係が認められた(図)。
【考察】本調査では、当ジム会員において年
齢が高くなるにつれてバランス能力が低下
することが示唆された。これは、閉眼片足
立ちテストの姿勢保持時間が年齢とともに
減少するという報告(厚生労働省、2022)
を支持する結果であった。一方で、20代か
ら50代においては、バランス能力の成績に
ばらつきが見られた。これには、日常生活
での運動量(Zhu et al., Int J Environ Res Public Health . 2021)や過去の運動歴が影響し
ている可能性が考えられるが、当ジム会員においては追加の検討が必要である。